パン屋の経営学
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売上1,000万円を達成したパン屋の原価率・人件費率を完全公開|収益構造の実態

年商1,000万円を達成した実在するパン屋のリアルな財務データを元に、原価率・人件費率・家賃比率の理想値と実態を解説します。

8分で読める編集部著者:編集部
売上1,000万円を達成したパン屋の原価率・人件費率を完全公開|収益構造の実態

「年商1,000万円を超えれば安心」——そう思っているパン屋オーナーは少なくありません。しかし、売上規模より重要なのは「利益率」です。実際に年商1,000万円を達成したパン屋の財務データをもとに、収益構造の実態と改善ポイントを解説します。

年商1,000万円パン屋の財務データ全公開

取材をもとに構成した、東京都内・個人経営・スタッフ3名(うちパート2名)のベーカリーAの実際の年間収支です。

項目金額売上比率
年間売上高1,050万円100%
原材料費315万円30.0%
人件費(パート含む)336万円32.0%
地代家賃105万円10.0%
水道光熱費63万円6.0%
設備償却・修繕費42万円4.0%
その他経費(広告・消耗品等)52万円5.0%
営業利益137万円13.0%

売上1,050万円に対して、手元に残る営業利益は137万円(約13%)。月換算すると約11.4万円です。一見すると少なく感じますが、業界平均の5.1%(日本政策金融公庫調べ)を大きく上回る優良ベーカリーと言えます。

原価率30%を実現した3つの工夫

① 主力商品に原材料を集中させる

ベーカリーAは食パン・バゲット・クロワッサンの3品を「看板商品」と位置づけ、全売上の約50%をこの3品で占めるよう商品構成を設計しています。製造工程の効率化と大量仕入れによるコスト削減が、原価率30%の実現につながっています。

② 国産小麦との価格固定契約

北海道産小麦を使用する農家と年間契約を結び、価格を一定期間固定しています。輸入小麦の価格変動リスクをヘッジしながら、「国産小麦使用」という訴求で価格転嫁もしやすくしています。

③ 廃棄率を2%以内に管理

1週間の販売データを曜日別・時間帯別に集計し、製造数を細かく調整することで廃棄率を2%以内に抑えています。廃棄率が1%改善するだけで、年商1,000万円規模では年間約10万円のコスト削減に相当します。

人件費率32%の内訳

ベーカリーAの人件費の内訳は以下のとおりです。

人員月額人件費年間
オーナー(自身の報酬)18万円216万円
パートA(週4日・6時間)7万円84万円
パートB(週3日・5時間)3万円36万円
合計28万円336万円

業界平均の人件費率28.5%より高い32%ですが、オーナー報酬が含まれているためです。オーナー報酬を除いた「スタッフ人件費率」は11.4%となり、適正水準です。

年商1,000万円でも赤字になるパターン

同じ年商1,000万円でも、収益構造が悪いと利益が出ないケースがあります。

項目優良ベーカリー(A)収益悪化ベーカリー(B)
原価率30%38%
人件費率32%35%
家賃比率10%15%
営業利益率13%-3%

Bのパターンに共通するのは、①立地コストの過大(家賃が高すぎる)、②廃棄ロスの放置による実質原価率の悪化、③過剰なスタッフ雇用です。売上規模より「利益率の構造」が重要であることがわかります。

年商1,000万円を超えるための実践ポイント

客単価と来客数の両方を把握する

年商1,000万円を月換算すると約83万円。客単価500円の店舗なら、月1,660人の来客が必要です。現状の来客数と客単価を把握し、どちらを伸ばすべきかを判断することが成長の起点です。

利益率を落とさずに売上を伸ばす

売上を増やすために商品数を増やすと、製造コストと廃棄リスクが増えて利益率が低下します。新商品追加より、既存の看板商品の認知拡大(SNS・地域広告)による来客増加の方が、利益率を保ちながら売上を伸ばしやすいアプローチです。

まとめ

年商1,000万円達成の鍵は「原価率30%・人件費率32%以下・家賃比率10%以下」という数値管理の徹底にあります。売上の多寡より、この3つの比率をコントロールできているかどうかが、長く続くパン屋の条件です。まず自店の3指標を計算し、業界平均と比較するところから始めてみてください。

※事例は取材をもとに構成。個人・店舗が特定されないよう一部変更しています。

参考・出典

  • 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2023年度版)
タグ:#原価率#財務#経営数字