地方の小さなパン屋が、店舗に来られないお客様へ全国発送する——ECは「大手だけのもの」ではありません。商品の選定と発送の仕組みさえ整えば、個人ベーカリーでも月商プラス20〜50万円の安定収益を作ることができます。岡山の成功事例とともに、EC参入の全手順を解説します。
EC販売に向いているパンの条件
すべてのパンがEC向きではありません。オンライン販売で成功するには、以下の3条件を満たす商品選びが不可欠です。
| 条件 | 詳細 | NG例 |
|---|---|---|
| 日持ちする | 常温で最低3〜4日、冷凍で1か月以上 | 生クリーム入りパン、フルーツデニッシュ |
| 解凍後も品質維持 | 冷凍→解凍後に焼き立てに近い食感が出る | バゲット(食感が落ちやすい) |
| ギフト需要がある | 贈り物・手土産として選ばれやすい | 総菜パン・サンドイッチ |
EC向き商品の例
- ラスク・フロランタン(常温・長期保存可)
- 冷凍クロワッサン・冷凍デニッシュ(解凍後トーストで復元)
- 食パン(冷凍スライス、高単価商品として成立)
- 焼き菓子セット(マドレーヌ・スコーン等のギフトBOX)
成功事例:岡山のリュスティック専門店
取材をもとに構成した事例です。岡山県で開業7年目の個人ベーカリーBは、国産小麦を使ったリュスティックを主軸に2021年からEC販売を開始。3年間で以下の変化を実現しました。
| 指標 | EC開始前 | EC開始3年後 |
|---|---|---|
| 月商(店舗のみ) | 約55万円 | 約55万円(変わらず) |
| EC月商 | 0円 | 約38万円 |
| 合計月商 | 約55万円 | 約93万円 |
| リピート購入率 | — | 約65% |
| 発送件数/月 | 0件 | 約120件 |
店舗の売上は変わらないまま、ECが純粋に上乗せされた形です。地方のパン屋にとってEC参入は「既存事業を守りながら収益を拡大できる」点が最大のメリットです。
EC販売を始める4ステップ
ステップ1:販売プラットフォームを選ぶ
| プラットフォーム | 特徴 | 初期費用 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| BASE | 食品販売に強い・設定簡単 | 無料 | 3〜6.6% |
| STORES | デザイン性高・サブスク機能あり | 無料〜 | 5% |
| 食べチョク | 生産者向け・農家直送イメージ | 無料 | 20% |
| 自社サイト(Shopify) | ブランド構築向き・拡張性高 | 月額33ドル〜 | 0〜2% |
まず始めるならBASEが最もハードルが低いです。商品登録から決済・注文管理まで一括で対応でき、食品向けの梱包サービスとも連携しています。
ステップ2:梱包・発送の仕組みを作る
EC成功の鍵は「商品到着時の感動」です。梱包のクオリティが口コミとリピートを左右します。
最低限揃えるもの
- 冷凍商品用:発泡スチロール箱+ドライアイス
- 常温商品用:クラフト箱またはギフトボックス
- 緩衝材:紙パッキン(エコ感が出てブランドにも合う)
- サンクスカード:手書き風の一言メッセージカード
発送コストは商品単価の10〜15%以内に収めることが採算確保の目安です。送料込みにするなら商品価格に上乗せし、「送料無料」を打ち出す方が購買率は上がります。
ステップ3:商品ページと写真にこだわる
EC販売では「写真と文章だけで買ってもらう」必要があります。商品ページで必ず書くべき内容は以下のとおりです。
- 使用している小麦・素材の産地・こだわり
- 賞味期限と保存方法(常温・冷蔵・冷凍)
- 解凍・食べ方の手順
- 製造者(オーナー)のストーリー
写真は「外観」「断面」「食べているシーン」の3カットが基本です。自然光の下でスマートフォン撮影でも十分なクオリティが出ます。
ステップ4:リピーターを育てる仕組みを作る
EC成功の核心は「1回買った人に2回目を買ってもらうこと」です。リピート購入率65%を達成したベーカリーBが実践した仕組みは以下のとおりです。
- 同梱チラシ:次回購入時に使える「300円OFFクーポン」を必ず同梱
- LINEへの誘導:「新作情報はLINEで先行告知」と記載し、LINE公式への登録を促す
- 季節の定期便:春・夏・秋・冬ごとに「季節のパンセット」を企画し、固定ファンに事前告知
EC参入前に確認すべき法的事項
食品のオンライン販売には「菓子製造業許可」が必要です(すでに取得済みであれば追加手続き不要)。また、食品表示法に基づくアレルギー表示・原材料名・賞味期限の記載が商品ページと梱包に義務付けられています。
消費者庁「食品表示基準」(2023年改正)に従い、特定原材料8品目(小麦・乳・卵・落花生・えび・かに・ そば・くるみ)の表示を必ず行ってください。
まとめ
EC通販はパン屋の収益を「店舗の売上+EC売上」の2本柱に変える有効な戦略です。始めるにはBASEへの登録・EC向き商品の選定・梱包の仕組みづくりの3つだけ。まず1商品・1プラットフォームから小さく始めて、リピーターが増えてから商品を広げるのが安全な進め方です。
※事例は取材をもとに構成。個人・店舗が特定されないよう一部変更しています。